手話サークル葛飾設立15周年記念講演会

かつしかの防災(水害)

講師:葛飾区地域振興部生活安全課 三山 覚 氏

2019年7月28日(日)青戸地区センターエポックホール

会長挨拶より

 

手話サークル葛飾は2005年(平成17年)4月に創立し、今年15年目を迎えました。 

葛飾区内のサークルは以前はかざぐるま、葛飾手話の会、麦の会という3つのサークルに分かれて活動していました。3つは昭和49年~50年代前半に設立され、それぞれが長く活動していました。葛飾区聴力障害者協会からの申し入れにより、2005年に1つのサークルに統一しました。それが手話サークル葛飾です。

 

新しいサークルでは、力を一つにして葛飾区聴力障害者協会とともに協働していくこと、防災ブロック単位ごとに支部を設置するという目標を掲げました。2005年の創立総会では「災害時の支援にむけた取り組みをしようという」活動目的も採択されました。もともとのサークルを支部として、第2支部、第5支部昼、第5支部夜、第6支部、第7支部とし、統一の1年後に第4支部が新しく設立されました。

 

手話学習、出前ボランティア、たましろの郷の支援などの活動に並び、防災のワーキンググル-プを立ち上げ、防災に関する情報収集、救命講習会の開催などの活動を少しずつしていました。

 

2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに、「災害は待ったなし、いつ東京で大きな地震が起こるかわからない」ということで、取り組みを急ぎ、2012年8月には手話サークル葛飾「聴覚障害者災害テキスト」を作成しました。このテキストは聴覚障害者の災害支援の方法についての共通認識を記しています。災害時に手話サークルとしては組織的な活動はしないものの、会員一人一人が自発的に行動すれば、大きな支援になるだろうという内容です。

 

その後、区の防災では、中川・新中川を中心に東と西で防災地域を分けるようになったために、サークルではブロック毎に一つ支部をという目標をとりやめました。2014年4月からは数字で支部をあらわす方法をやめ、地域名で表すようになり、現在の金町、新小岩、亀有、立石、堀切支部というようになりました。

 

サークルでは葛聴協と合同で防災の講演会、避難所立ち上げワークショップを開催したり、昨年2018年度は葛聴協と合同で春に防災の講演会、夏はAED講習会を開催、冬は防災学習会を開催したりと、防災はサークル活動の柱の一つとなっています。

 

昨年8月に江東5区の大規模水害に関する協議会の報告がありました。ひとたび水害が発生したら、1週間は水が引かない、近隣県への避難が必要という内容には大変驚きました。水害は私たちが暮らす下町、城東地区の大きな課題です。この葛飾区は、昭和22年のカスリン台風で大きな浸水があった地域です。高度経済成長で地盤沈下が起き、土地が低くなっていると、昔、学校で教わったと思います。

 

また、今年6月末からの九州の豪雨災害の時には、気象庁の会見やニュースで、「自分の命と大切な人の命を守る行動を自らとってください」という表現が使われました。もし葛飾で水害が起こった場合、私たちは情報を受け止め、自分で判断して、避難行動をとれるでしょうか?情報はいつ出るのでしょうか?これは大きな心配です。

 

そういうわけで、今回創立15年目の記念講演会で、水害をテーマに決め、サークル員、聞こえない人たちと一緒に講演を聞き、意見交換の機会を作りたいと考えました。本日は葛飾区の地域振興部生活安全課の職員、三山覚(みやまさとる)さんに来ていただきました。三山さんよろしくお願いいたします。

 

また本日の情報保障、手話通訳は、登録手話通訳活動をしているサークル員の方たちにお願いしています。よろしくお願いいたします。講演を聞き、皆さんで率直な意見や感想を出し合いたいと思います。

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講演「かつしかの防災(水害)」

講師:葛飾区地域振興部生活安全課 三山 覚氏

水害とは?

内水氾濫…ゲリラ豪雨など大量の雨が降った際にマンホールや排水溝から水があふれ街が浸水すること。

外水氾濫…いわゆる洪水。川の氾濫や台風の高波によって川の水が街にあふれること。

 

避難方法は?

内水氾濫の場合の避難方法は洪水とは違い浸水しても比較的早い時間で水は引く。一時的に2階以上に避難すれば命の危険はない。ゲリラ豪雨など大雨の中、屋外に出るのは危険なのでご注意を。

外水氾濫(洪水)の時の避難方法は地震の時とは違う。

 

基本の考え方は浸水しない地域への避難。避難する場所はどの川が氾濫したかによって状況は変わり、一律にこの場所へとは決まっていない。地震の時は近くの小学校が避難所と決まっているが、水害はどこと指定されてない。浸水した街にそのままいた場合には電気ガス水道が使えない、水・食料がなくなってしまう、ケガの治療ができないなどの状況になる。

 

逃げ遅れたら?

緑色のマークの建物に一時的に避難できる。

洪水緊急避難建物が区内に240ヶ所(小学校や施設など)指定されている。他に自治町会、マンションなどで協定があれば一時的に避難もできる。UR(公団住宅)や都営住宅と協定を締結し、一時的に共有スペースに逃げられる協定も結んでいる。

 

葛飾区からの情報発信・タイミング

基本、水害は区内・区外の避難先に避難する。河川によっては千葉県や23区の西に避難する場合もある。

 

呼びかけのタイミング

上流地域で長雨が続いて氾濫の恐れがある場合、遅くとも氾濫する数時間前には避難情報を出す。早ければ10時間ほど前に出すこともできる。広域避難が必要となる1000年に一度といわれる雨量の場合は、江東5区で分析・協議し2~3日前に呼び掛ける。

 

区からの避難呼びかけ方法

防災行政無線…短い言葉で放送する。サイレン+言葉

サイレンを聞いたあとにテレビやラジオ、区のHP,区の安全安心情報メール様々な媒体で情報を見てください。(NHKデータ放送のDボタンで地域の生活防災情報。荒川、江戸川の河川情報のHP。スマホの防災速報のアプリ。)

 

視覚障害・聴覚障害をお持ちの方に

災害情報の発信として、登録した電話番号・FAXに区が避難情報を発信した場合に情報をお届けするサービスがある。(申込書はサークルにもあります)

区からの情報

 

避難準備・高齢者等避難開始

 

 

避難勧告

 

 

避難指示

 

 

要配慮者(高齢者、障害者、乳幼児、妊娠されている方など)は避難行動を開始。一般の方は避難の準備を開始。

 

一般避難者は避難行動の開始。要配慮者は避難を完了している。

 

まだ避難していない一般避難者は直ちに避難行動を開始する。

気象庁の5段階

 

レベル3

 

 

 

レベル4

 

 

レベル5

すでに水害が発生し始めているので避難指示


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【質疑応答】

Q(サークル) 地震の災害と水害の場合では逃げる場所が異なるとわかりました。避難と言えば学校という意識で覚えています。その違いの広報、啓発が区としていきわたっていますか?また、水害の場合はどうしたら良いのか、我々が学習する場合のアドバイスを教えてほしいです。

 

 水害の広報について、どちらかというと地震中心の部分もありましたので、いきわたってない部分もあります。出前講座や区からの配布物、ハザードマップも見直すとのことですので、皆さんに分かりやすく周知して行きたいと思います。

 

Q(サークル) 大きな水害時には区内にいてはダメ、江東5区の人は区外へ行きましょうとのお話でした。家の近くの学校ならよいが、区外へはどうやって行けばいいのか?受け入れ先の準備はできているのか?先日の宮崎の時に(避難所に)入れない人がいたが、そのあたりのことを教えてください。

 

 江東5区のケースはかなり大きな台風になるので、72時間前とかなり早い段階で呼びかけをします。公共交通機関で自主的に動ける段階での発信になります。受け入れ先について、他の自治体の受け入れ先の準備はこれからの協議。今日・明日に来た際には、どこへ避難とは決まっていない。今できる方法としては区外のホテルに逃げる、親戚の家に逃げるような方法になる。学校施設のカギ開けはすぐに入れるように配置職員で対応していきたい。

 

Q(ろう協) 障害者が避難するときに介助者も一緒に優先して避難できる?

 

 当然一緒に行っていただくものと理解しています。

 

Q(ろう協) 高齢者とか障害者を優先して避難させる際に、必要な介助者とか手話通訳者も一緒に配置してもらえるのですか?

 

 その辺は確認させていただいて、後日代表者を通じて返事をさせていただきます。確認が必要です。( → この回答は宿題になりました )

 

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  【ワークショップ】

 

3つのグループに分かれ講演を聞いて「わかったこと・解決できたこと」「心配・不安なこと」を出し合いました。サークル員もろう者も其々付箋に書き出してみました。一部ですがご紹介します。

 

「わかったこと・解決できたこと」

・河川の氾濫前に、区から避難呼びかけのサイレンが鳴る。

・ラジオやテレビのデータ放送、スマホの防災アプリなどを活用して情報を得る。

・洪水緊急避難建物の存在や標識を初めて知った。

・マンションやホテルなど民間の高い建物にも逃げられる。

・地震とは避難方法が違う。

・ハザードマップや避難場所の確認をしておくべき。

・水のうの作り方がわかった。

・水が引かないことを想定して食料や水、薬などの用意が必要。

 

「心配・不安なこと」

・防災無線やサイレンが室内で聞こえるのか?

・就寝時はサイレンが鳴ってもわからない。

・停電時にはテレビもファックスも使えず情報が入らない。

・どこに逃げたら良いのか分からない。区内は殆ど浸水しているのではないか。

・他地域への移動方法はどうなるのか。交通手段の確保は?

・避難所は定員オーバーになるのではないか。ペットの受け入れは?

・広域避難というならば受け入れ先との協議を進めてほしい。

・家族との連絡手段。

・停電など水害後の生活が心配。

・流通が止まることによる物不足。

・避難時に自己判断力が必要になることが不安。…など

 

今回の講演会は47名(サークル37名、ろう協10名)でした。まだ不安なことが多いと感じた講演会でした。とにかく気持ちの面でも備えておいたほうが良いようです。

 

報告:田村(新小岩)・小林美(亀有)